医療関連感染情報の季刊誌 Vol.23 No.2 (2018)

細菌感染からみた食中毒対策

奥住 捷子(獨協医科大学病院 感染制御センター/ 上尾中央 総合病院 検査技術科)・熊坂 一成(上尾中央総合病院 臨床検査科/ 感染対策室)

はじめに

 食中毒の予防は、病因物質によって異なり細菌性の場合は、①菌をつけない(調理前には必ず手洗い)、②増やさない(生鮮食品は直ちに冷蔵庫へ)、③殺す(食材は中心部まで十分に加熱)の三原則である。一方、ウイルスは食品中では増殖しないので、持ち込まない、広げない、つけない、殺す、の四原則といわれる。
 報告されている食中毒の件数等は、届出事例の集計であり、一般家庭で発生していると思われる食中毒は、食中毒と認識されずに、あるいは認識したとしても自然軽快することが多く、ほとんどの症例は把握されていない。
 近年の食中毒は、ノロウイルスとカンピロバクターが二大病因物質になり、その変化に伴い1 事例当たりの発症者数の増加と冬季に発生数が多くなった。
 食中毒の病因物質の変化や発症件数減少には、内閣府の食品安全委員会の活動や、国際基準に沿った食の安全確保を徹底することを目的としている改正食品衛生法も見逃せない。本稿では、病因物質の中でも細菌感染による食中毒の発生予防と感染対策について述べたい。

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