医療関連感染情報の季刊誌 Vol.25 No.1 (2020)

救急外来(Emergency Room;ER)における感染対策

佐々木 淳一(慶應義塾大学医学部 救急医学)

ERは医療機関の門戸である

 救急医療の最前線である救急外来(Emergency Room;ER)は医療機関の門戸として非常に重要である。ここには様々な急性期患者や易感染宿主が来院するのみならず、諸外国からの帰国者、訪日旅行者など、世界中から感染性疾患が持ち込まれる危険性がある。その来院形態も自ら外来受診するウォークイン、現場から救急車による搬送,他医療機関からの転院搬送,海外よりの医療搬送など多岐にわたり時々刻々と様々な脅威にさらされており、これらの患者がどのような感染リスクを持っているかを事前に知ることは極めて困難である。すなわち、ER は患者が感染性病原体を有しているか不明の状態で、患者の受入・診療を行わねばならず、感染対策上のリスクは極めて高いといえる。
 一方で、ER を受診する患者の重症度・緊急度は極めて多彩であり、その診療には日常的に早急な判断が求められる。初療時の患者情報が乏しい中で、各種の病原体の感染が疑われる患者を如何に効率良く抽出し、患者 - 患者間や患者 - 医療従事者間の感染防止対策を講じる必要がある。また,多くの医療関係者と、多くの患者が短時間で出入りするため、感染対策を高いレベルで実行するには、厳しい条件が揃っている現場といえる。しかし、患者、医療者、病院を守る上でER における感染対策は極めて重要で妥協できるものではない。

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