医療関連感染情報の季刊誌 Vol.25 No.2 (2021)

高齢者施設・在宅医療における感染症対策

村上 啓雄(ぎふ綜合健診センター 所長 /岐阜大学 名誉教授 / 同医学部附属地域医療医学センター 特任教授)

はじめに

 65 歳以上の高齢者人口比率が世界一の超高齢社会であるわが国では、高齢者の医療・介護・予防・住まい・生活支援を、全国民が常に意識して日常生活を送ることが当たり前になってきている。介護サービス施設(居宅サービス、地域密着型サービス、居宅介護支援に加え、介護保険施設)もごく一部を除き毎年大きく施設数が増加している。各施設でのスタッフ不足と、各利用者に係る業務負担が極めて大きいことも深刻な課題である。
 そのような背景で医療・介護・福祉の連携はますます重要となり、患者、利用者が療養型病院・高齢者施設・在宅医療において急性期病院から切れ目のない診療プロセスで適切なサービスを受けられるように、感染対策の面でも規格統一と質の向上が求められている。しかし、現場では急性期病院と違って ICT がそもそも存在せず、感染対策が適切に講じられていない場合も多く、知識や技術の不足から過剰な対応をしたり、コストの問題からやるべきことをできなかったりと、さまざまな課題を抱えているのが現状である1)(表1)。

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