医療関連感染情報の季刊誌 Vol.25 No.3 (2021)

インバウンド感染症とクイック・リファレンス

川名 明彦(防衛医科大学校 内科学講座/ 感染症・呼吸器)

❝インバウンド感染症への対応~感染症クイックリファレンス~❞ 作成の背景

 2013 年9 月7 日(日本時間)、2020 年に東京で56 年ぶり2 回目のオリンピック・パラリンピック(以下、東京大会)が開催されることが決定した。
 日本感染症学会は、東京大会と関連して増加が予想される訪日外国人(インバウンド)がもたらす感染症に関し、診療に役立つリファレンスを作成し2019 年7月に同学会ウェブサイトに公開した。これが「症状からアプローチするインバウンド感染症への対応~東京2020 大会に向けて~感染症クイック・リファレンス」(以下、クイック・リファレンス)である1)
 しかし2020 年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まり、東京大会の延期という誰も予想し得なかった事態となった。感染拡大防止のため、地球規模で人の往来が厳しく制限され、インバウンドは激減し、国内外の感染症シーンも大きく変貌した。

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