米国では、入院患者千人あたり、1.3人~14.5人の割合で院内血流感染を発生し、62,500人が毎年死亡しているといわれている。このほど902床のアイオワ大学病院において、1980年7月~1992年6月までの12年間に入院した患者260,834人を対象に、血流感染症について調査したところ、3,077人の患者に原発性、続発性の院内血流感染が延べ3,464件発生した。そのうち2,034件は原発性で、1981年は51%、1992年は71%に増加した。このうち、少なくとも20%は、静脈内カテーテル留置などに起因するものであった。その他は続発性感染で、呼吸器感染、外傷感染、尿路感染によるものであった。血流感染の3,077人のうち、1,150人は死亡した(年平均39%)が、その他に起因する院内死亡率は年平均2.9%と低値であった。
ところで、この間の感染症患者のうち血流感染症患者の死亡率は年とともに減少したが、入院患者千人あたりの血流感染死亡者は、3.56人から5.15人と増加した。院内血流感染患者の死亡リスクは、非感染者の8~24倍高かった。全入院死亡患者に対する院内血流感染による死亡患者は、1981年は11.4%であったが、1992年には20.4%に増加した(正確な院内血流感染死亡者はその7割の14%)。
血流感染の病原菌は、1983年までは好気的グラム陰性桿菌が52%であったが、1990~1992年においては29%に減少した。一方、グラム陽性球菌は、その間42~54%にまで増加した(1.4倍)。そのなかでも、黄色ブドウ球菌(CNS)の増加が1984年より著明に増加した。次は黄色ブドウ球菌(S.aureus)で血流感染件数の12~17%。また、enterococci、candida菌種野4種と複合病原菌が有意に増加した。CNSは院内血流感染の1/4を占めており注意を要する。広範囲スペクトラム抗生物質の使用がCNSの増加を促していると考えられる。今回の研究は院内血流感染の効果的な予防努力の必要性を強く印象づけるものであった。(訳:仲川義人)
Carlisle Vol.1 No.1 p8-10 January 1996
医療関連感染対策 情報季刊誌
病院内血流感染症―感染率、死亡率および全入院死亡への影響の経年変化
Pittet,D.& Wenzel,R.P. Nosocomial Bloodstream infections Secular Trends in Rates Mortality, and Contribution to Total Hospital Deaths. Arch. intern. Med.,155:1177-1184,1995

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