医療関連感染対策 情報季刊誌

食品加工場から分離されたブドウ球菌の四級アンモニウム化合物に対する抵抗性と抵抗性プラスミドpST827のヌクレオチド配列

Heir,E.,Sundhelm,G.&Holck,A.L. Resistance to quaternary ammonium compound in staphylococcus spp.isolated from the food industry and nucleotide sequence of the resistance plasmid pST872. J.Applied bacteriol.,79:149-156,1995

四級アンモニウム化合物(QAC)である塩化ベンザルコニウム(BC)に対し抵抗性を示すブドウ球菌、特に黄色ブドウ球菌が臨床分離株に認められることが、多くの研究者達によって報告されているが、食品加工場から分離される黄色ブドウ球菌にQAC抵抗性を示すことはほとんど知られていない。黄色ブドウ球菌をはじめとした細菌による熱抵抗性エンドトキシン産生が、食肉加工場などで問題となる。

消毒剤抵抗性は、qacA、qacB、qacC、geneの多剤抵抗性因子を示し、このうちの1つによって抵抗性化される。以前、臨床由来ブドウ球菌から報告されたQAC抵抗性遺伝子qacCのアミノ酸開列構造(ORF)が確認され、グラム陽性菌の転写蛋白も報告されたことから、広い範囲にわたる相同性を示す蛋白からORFが発見された。今回、BCに抵抗性を示す食肉由来のブドウ球菌の2.8kbプラスミドpST827のヌクレオチド配列を決定した。2.8kbプラスミドpST827の断片は完全に順列化され、蛋白を暗号化できる2つのORFが発見された。より小さなqacC’は分子量11681で、107個のアミノ酸蛋白を暗号化している。TAAAAT(-10)とTTGCAA(-35)の部分(図は省略)は、Bucillus属と一致した遺伝子暗号の部分である。pST827のqacC’順列は、226bpの直鎖の繰り返しで、qacC’の下側と反対側の暗号化は、分子量38992、332個のアミノ酸蛋白を暗号化できる、ORFである。そのORFはTATATT(-10)とTTGACA(-35)からなるプロモーター部分が先行している。食品加工場から分離された191株からQAC抵抗性をスクリーニングした結果、25株がBC抵抗性であった。さらに、pST827や接近している関連プラスミドが、QACと抵抗性ブドウ球菌の間に広く存在していることが示された。

以上、異なった場所や時期に食品加工場から、抵抗性のブドウ球菌が分離されたことは、QAC抵抗性のブドウ球菌が食品加工場に広く潜在することを意味しており、大きな問題であると考える。(訳:白石正)

Carlisle Vol.1 No.1 p8-10 January 1996

医療関連感染対策情報
季刊誌

Carlisle