下水疫学の概要と特長
下水検体を対象としてウイルス等の病原体を検査する「下水疫学調査」(下水サーベイランスとも呼ばれる)は、臨床検体に依存せずに集団レベルでの感染流行状況を把握できる病原体サーベイランス手法として注目されている。下水中には感染者の排泄物や分泌物に由来する病原体が含まれるため、症状の有無、受診行動、検査体制等に左右されない客観的かつ連続的なデータを取得できるという特長を有する。さらに、非侵襲的かつ匿名的に地域の感染動向を効率よく把握できる点も大きな利点であり、臨床サーベイランスを補完する手法として大きな可能性を有している。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を契機として、下水中の新型コロナウイルス(SARSCoV-2)を定量することで地域の感染動向を把握できることが広く知られるようになり、厚生労働省の感染症流行予測調査事業の一環としての下水サーベイランスに加えて、いくつかの自治体においても独自の事業として実施されている。また、シークエンシング技術を用いることで変異株の検出も可能であり、特定地域における変異株の侵入を早期に把握できることが示されている。
医療関連感染情報の季刊誌 Vol.29 No.2 (最新号)
下水疫学による感染動向の早期検知と院内感染対策への応用
北島 正章(東京大学大学院工学系研究科附属水環境工学研究センター 国際下水疫学講座)

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