感染対策情報レター

診療報酬改定と感染対策

はじめに

平成14年4月の診療報酬改定には感染対策に関係する変更点も含まれています。その変更内容を要約してご紹介します。

1.院内感染防止対策に関する基準

入院基本料などを1日あたり5点減額する院内感染防止対策未実施減算の基準が変わりました。変更の要点を列記すると以下のようになります。

設備・体制
旧: MRSAによる感染を防止するための十分な設備と体制
新: MRSAなどによる感染を防止するための十分な設備と体制

院内感染対策委員会
旧: 月1回程度、MRSA院内感染対策委員会を開催
新: 月1回程度、院内感染対策委員会を開催

感染情報レポート
旧: 週1 回程度、検査部による各種細菌検出状況と薬剤感受性成績の報告
新: 特に変更なし

手洗い設備
旧: 各病室の入り口に速乾式手洗い液などの消毒薬を設置
新: 各病室水道又は速乾性手洗い液等の消毒液を設置。職員等に対し流水による手洗いの励行を徹底

これらの改定は、主にMRSA を対象としていた感染対策の基準から、その他の感染起因微生物にも対象を拡大したこと、および手洗い設備の設置場所の指定を緩和し、流水による手洗いも感染対策の基本的な方法として位置付けて、その励行の必要性を強調したことで注目されます。

なお今回の改定では、院内感染防止対策未実施減算の他に、医療安全管理体制未整備減算(1日につき10点)、褥瘡対策未実施減算(1日につき5点)が入院料等の減算項目として新設(平成14年10月1日から適用)され、それぞれに基準が設けられました。

2.手術時の外皮用消毒薬の保険請求

手術時に使用された薬剤の算定に関して、今回の改定により「外皮用殺菌剤を除く」という但し書きが当該項目に追加されたため、手術野の消毒に用いられる外皮用消毒薬についてはその総量価格にかかわらず別途請求することができなくなりました。
ただし、術後創の消毒に用いられる外皮用消毒薬は術後創処置の薬剤料として、今までと変更なく請求できます。

旧: 1回の手術に使用される総量価格が15円を超える薬剤について、所定点数とは別に保険請求できる。
新: 1回の手術に使用される総量価格が15円を超える薬剤(外皮用殺菌剤を除く)について、所定点数とは別に保険請求できる。

病院感染対策に用いる消毒薬は通常医療用医薬品であり、それらを保険請求の観点から整理すると以下のように分類することができます。

1.器具・環境専用の消毒薬 – 薬価基準対象外、保険請求不可(グルタラールなど)
2.手指専用の消毒薬 – 薬価基準対象外、保険請求不可(速乾性消毒薬など)
3.患者適用のある消毒薬 – 薬価基準収載、保険請求可能(ポピドンヨードなど)
(医療用医薬品でない消毒薬 – 薬価基準対象外、保険請求不可)

患者適用のある消毒薬で薬価基準に収載されているものを患者の処置に使用した場合(手術ではなく処置の薬剤料を請求する場合)には、今までと変更なく、その使用薬剤の総量価格が1 回あたり15 円を超える場合に請求することができます。

なお、患者適用のある消毒薬で薬価基準に収載されているものでも、器具消毒や手洗い、つまり患者以外に使用した場合には保険請求の対象とはなりません。

まとめ

以上のように今回の改定は病院感染のあるべき姿を反映した側面において注目されますが、感染対策において使用する消毒薬などの薬剤や医療材料の多くは固定された入院料等や手術料の中で医療機関がまかなうべきコストであるという側面はかえって強化されたと思われます。
優れた病院感染対策を行うことが患者に提供する医療の質を高めるための不可欠な要素であるという命題を、医療機関の経営レベルにおいて確立することがますます求められていると思われます。

(この文は診療報酬改定の一部を簡単に紹介したものですので、医療機関におかれましては関連する通知の原文をよく参照の上、請求実務を行われるようお願いいたします。)


<参考>

社会保険研究所「点数表改正点の解説」平成14年4月版
社会保険研究所「点数表改正点の解説」平成12年4月版


2002.04.15Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

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