感染対策情報レター

平成24年度診療報酬改定 ―感染防止対策関連項目について―

はじめに

平成24年4月の診療報酬改定により、感染防止対策に関する加算が一部変更となりました 1)。今回の改定においては「充実が求められる分野」のひとつとして「感染症対策の推進」が挙げられており、院内感染の防止策として、感染防止対策チームの評価が従前の医療安全対策加算とは別の評価体系に改められています。また、医療機関同士の連携や相互の感染防止対策の評価等を行うことによる加算が追加されています。今回の改定による変更内容について、感染対策関連の項目をご紹介いたします。

医療安全対策加算、感染防止対策加算の見直し

【感染防止対策加算の新設】

従前の医療安全対策加算の中に組み込まれていた感染防止対策加算は、今回の改定より独立して新しい加算項目として設定されています。また、感染防止対策チームの人員要件を緩和した感染防止対策加算2が新設され、感染防止対策加算2を算定している医療機関は感染防止対策加算1を算定する医療機関と連携していることとされました。

(新)感染防止対策加算1 400点(入院初日)
(新)感染防止対策加算2 100点(入院初日)

〔施設基準〕
感染防止対策加算1

①専任※1の院内感染管理者が配置されており、感染防止に係る部門を設置していること。
②感染症対策に3年以上の経験を有する専任の常勤医師、5年以上感染管理に従事した経験を有し、感染管理に係る適切な研修を修了した専任の看護師(医師又は看護師のうち1人は専従※2)、3年以上の病院勤務経験を持つ感染防止対策にかかわる専任の薬剤師、3年以上の病院勤務経験を持つ専任の臨床検査技師からなる感染防止対策チームを組織し、感染防止に係る日常業務を行うこと。
③年4回以上、感染防止対策加算2を算定する医療機関と合同の感染防止対策に関する取組を話し合うカンファレンスを開催していること※3・※4。
④感染防止対策加算2を算定する医療機関から感染防止対策に関する相談を適宜受け付けること。
(平成24年診療報酬改定の概要において、新設の感染防止対策加算1の変更点は、従前の医療安全対策加算における感染防止対策加算の施設基準に上記③が追加されたのみとありましたが、通知ではそれに加え上記④が追加されています。)

感染防止対策加算2

①一般病床の病床数が300床未満の医療機関であることを標準とする※5
②専任の院内感染管理者が配置されており、感染防止に係る部門を設置していること。
③感染症対策に3年以上の経験を有する専任の常勤医師、5年以上感染管理に従事した経験を有する専任の看護師(医師、看護師とも専任で差し支えない)、3年以上の病院勤務経験を持つ感染防止対策にかかわる専任の薬剤師、3年以上の病院勤務経験を持つ専任の臨床検査技師からなる感染防止対策チームを組織し、感染防止に係る日常業務を行うこと。
④年に4回以上、感染防止対策加算1を算定する医療機関が開催する感染防止対策に関するカンファレンスに参加していること※4

なお、この感染防止対策加算は、第2部通則7に規定する院内感染防止対策を行った上で、更に院内に感染制御のチームを設置し、院内感染状況の把握、抗菌薬の適正使用、職員の感染防止等を行うことで院内感染防止を行うことを評価するものであり、当該保険医療機関に入院している患者について、入院期間中1回に限り、入院初日に算定します。なお、ここでいう入院初日とは、第2部通則5に規定する起算日のことをいい、入院期間が通算される再入院の初日は算定できないとされています2)。感染制御チームの業務としては、以下の項目が挙げられています3)

ア.
感染制御チームは、1週間に1回程度、定期的に院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うとともに、院内感染防止対策の把握・指導を行う。また、院内感染事例、院内感染の発生率に関するサーベイランス等の情報を分析、評価し、効率的な感染対策に役立てる。
院内感染の増加が確認された場合には病棟ラウンドの所見及びサーベイランスデータ等を基に改善策を講じる。巡回、院内感染に関する情報を記録に残す。
イ.
感染防止対策チームは微生物学的検査を適宜利用し、抗菌薬の適正使用を推進する。バンコマイシン等の抗MRSA薬及び広域抗菌薬等の使用に際して届出制等をとり、投与量、投与期間の把握を行い、臨床上問題となると判断した場合には、投与方法の適正化をはかる
ウ.
感染制御チームは院内感染対策を目的とした職員の研修を行う。また院内感染に関するマニュアルを作成し、職員がそのマニュアルを遵守していることを巡回時に確認する。

【医療安全対策加算における感染防止対策加算の廃止】

上述の感染防止対策加算の新設に合わせて、従前の医療安全対策加算の中の注2に設定されていた下記の感染防止対策加算は廃止となります。

(旧)医療安全対策加算 注2
組織的な感染防止対策に係る別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者については、感染防止対策加算として、所定点数に100点を加算する。

感染防止対策地域連携加算の新設

感染防止対策加算1を算定する医療機関同士が連携して相互に感染防止に関する評価を行った場合の加算として、新たな加算が新設されています。

(新)感染対策防止加算 注2
感染防止対策地域連携加算 100点


〔施設基準〕
①感染防止対策加算1を算定していること。
②感染防止対策加算1を算定している医療機関同士が連携し、年1回以上、互いの医療機関に赴いて、相互に感染防止対策に係る評価を行っていること。

おわりに

今回の診療報酬改定では、各医療機関における感染防止対策の評価の充実、推進が図られることが目的とされています。これまで医療機関ごとに行われていた感染対策について、医療機関同士で感染防止対策を評価しあうことにより、客観的に現状の感染対策が評価されることで、より有効な感染対策へと強化されていくことが期待されます。また、新たな地域連携加算の新設により、医療機関同士の連携による地域における感染対策のさらなる推進が図られていくことも期待されます。

(平成24年4月診療報酬改訂の一部を紹介したものです。通知原文をよくご参照の上、請求実務を行われるようお願いいたします。)

2012.5.24訂正
※1・※2
現在までに(平成24年5月21日現在)、感染防止対策加算の要件としての「専任」「専従」に対する明確な解釈は通知等において示されておりません。
※3
感染対策防止加算2を算定する医療機関が複数ある場合、カンファレンスは複数の医療機関との合同でよい4)
※4
カンファレンスには、原則、感染制御チームを構成する各々の職種(医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師)がそれぞれ少なくとも1名ずつ参加すること4)
※5
300床以上であっても、感染対策防止加算2の基準を満たしている場合、加算2の届出を行うことができる。また、300床未満であっても、感染対策防止加算1の基準を満たしている場合、加算1の届出を行うことができる4)


<参考文献>

1.厚生労働省.
診療報酬の算定方法の一部改正する件、厚生労働省告示第76号.
平成24年3月5日.2012
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/2-20.pdf

2.厚生労働省保険局医療課.
平成24年度診療報酬改定関連通知の一部訂正について.事務連絡.
平成24年3月30日.2012
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/dl/zimu3-1.pdf

3.厚生労働省保険局医療課長.
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について.
保医発0305第1号.平成24年3月5日.2012
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/2-28.pdf(通知全文)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/2-25.pdf(別添1)

4.厚生労働省保険局医療課.
疑義解釈資料の送付について(その1).
事務連絡.平成24年3月30日.2012
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/dl/zimu2-1.pdf


2012.5.15 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

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