医療関連感染情報の季刊誌 Vol.27 No.3 (2024)

周術期感染対策の現状と課題

大毛 宏喜(広島大学病院 感染症科)

はじめに

 高齢化の進行と働く世代の人口減少、高額医薬品・医療材料・医療機器の導入等により、医療を取り巻く環境が急速に変化しつつある。しかもその向こうに見えるのは、人口減による急性期医療過剰時代である。現在急性期を担う医療機関では、高齢者が増加する向こう数十年は手術件数も多いが、その後急速な件数減少が見込まれている。これが地域医療構想による急性期医療機関の集約化が求められる所以である。
 医療関連感染は治療成績や医療の質を左右するだけでなく、病院経営にも影響を及ぼす。中でも手術部位感染(SSI)対策は術前・術中・術後に多職種連携が必要で、取り組みの差が出やすい。しかもSSI リスクの高い症例の増加や薬剤耐性菌の問題という逆風が吹いている。SSI 対策は今どのような意味を持っているのか、今後の急性期医療機関淘汰の波にどう立ち向かうべきなのかを概説する。

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