はじめに:ポリオと根絶活動
ポリオ(急性灰白髄炎)は、18 世紀頃から流行がみられ、1950年代まで世界各地で流行してきたが、不活化ワクチン(inactivated poliovirus vaccine:IPV)や経口ポリオワクチン(oral poliovirus vaccine:OPV)が開発され患者は激減、本稿執筆時点でポリオの蔓延国はパキスタンとアフガニスタンのみである。わが国は1981(昭和56)年に根絶されている。
ワクチンウイルスが人から人への感染を繰り返すうちに毒性をもったワクチン由来のポリオウイルスに変化することがあり、伝播型ワクチン由来ポリオウイルスとして、しばしばアウトブレイクを起こしている。
筆者は2019年から約1年間ナイジェリアでポリオ根絶のSTOP(Stop Transmission of Polio)プログラムに参加、ポリオ対策を実践した。STOP は、アメリカ疾病対策予防センター(CDC)が派遣前訓練を提供するもので、20 年以上もの歴史があるプログラムである。STOPer と呼ばれるメンバーは、WHO またはUNICEF の実施疫学やデータマネジメントのコンサルタントとして、アフリカやアジアに派遣される。近年は、ポリオ対策だけでなくVPD(vaccine preventable diseases)対策を網羅的にカバーしている。
医療関連感染情報の季刊誌 Vol.28 No.1 (最新号)
ナイジェリアにおけるポリオ対策
WHO 実施疫学コンサルタントとしての活動
須藤 恭子(国立国際医療研究センター国立看護大学校 国際看護学)

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