消毒薬テキスト第5版

I 感染対策における滅菌・消毒の役割

1 医療関連感染とは

感染症が発症するには、原因微生物の存在、生体の感染しやすい部位の存在、感染症を発症させるのに十分な微生物量、感染経路の成立のすべての条件が満たされることが必要である。感染制御とはこれらの諸条件の少なくともひとつを満たさないようにして、感染症の発生を事前に防止すること(prevention)および発生した感染症をさらに広げないこと(control)を意味する1)。  

これまでは、病院内で体内に接種された(植え付けられた)微生物によって引き起こされる感染症を病院感染(院内感染)とされ、退院後に発症しても、入院中に接種された微生物による感染症であれば、病院感染(院内感染)とされていた。逆に、入院中に発症した感染症であっても、病院外で接種された微生物による感染症であれば、市井感染とされていた。

しかし、急性期病院、長期療養施設、外来クリニック、透析センター、サージセンター(日帰り全身麻酔手術施設)や在宅など医療サービスが多様化したこと、また病原体への曝露・感染場所の特定が難しいことが考慮され、2007年米国疾病対策センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)から公表されたガイドラインにおいては「nosocomial infection(院内感染)」という用語から「healthcare-associated infection(医療関連感染)」へと変更された。また外来および在宅については、内科的または外科的介入が関連した感染症も医療関連感染としている2、3)。この変更以降、日本においても「病院感染(院内感染)」にかわり「医療関連感染」という用語が広く使用されるようになった。患者への医療関連感染のみならず、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や結核菌などが病院内で医療従事者に感染した職業感染も医療関連感染である4)。なお、本テキストにおいても「医療関連感染」を用いることとする。

患者への医療関連感染においては、平素無害な菌による易感染患者への感染、つまり日和見感染(opportunistic infection)が近年特に重大な問題となっている。なかでも緑膿菌やアシネトバクターなどのグラム陰性菌は広範囲の抗菌薬に耐性を示す場合があり、治療が困難となるため深刻である。2010年には、海外において感染が拡大しつつあるニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ1(NDM-1)産生大腸菌/肺炎桿菌やKPC型(KPC:Klebsiella pneumoniae carbapenemase)カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌の感染/保菌例が国内で初めて報告され5、6)、拡大が危惧された。なお日和見感染について論議する場合、特にグラム陰性菌における日和見感染が問題視されるが、グラム陽性菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染も、健常人や比較的抵抗力のある患者においては、伝播したMRSAが感染を発生させない場合がほとんどであるという意味で、日和見感染のひとつとしてとらえるべきである7、8)

また、感染はその起因菌の由来により、患者自身に由来する内因性感染と環境由来の菌による外因性感染に区別することができる。抗菌薬の投与による菌交代現象により易感染患者などにおいて発生する感染症(例えばクロストリジウム・ディフィシル等による感染症)は現代の典型的な内因性感染であり、このような場合、抗菌薬の投与法が感染対策のポイントとなる。MRSA感染は、典型的には医療従事者の手指などを介して細菌が伝播した結果引き起こされる外因性感染であり、このような場合には消毒を含めた感染経路の遮断が感染対策のポイントとなる。

一方、2003年前半の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行では、病院におけるウイルス感染の拡散が重大な位置を占め、市井における集団感染の契機ともなった。インフルエンザにおいても施設内、病院内の集団感染が多数の死亡と関連している9)。市井においても2009年にインフルエンザ(H1N1)2009が新型インフルエンザとして拡がり脅威であった10)。さらに昨今はグローバル化のため、新興感染症の輸入感染・拡大が危惧されている。2015年5月、韓国では中東から帰国した男性を機に複数の医療機関において中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome:MERS)が拡大したが、日本国内へもMERSの拡大が懸念されたものであった11)

以上から、医療関連感染対策は、細菌のみならずウイルスなどを含めた広範な微生物を対象とする。なお、グローバル化に伴い日本国内において感染拡大のない新興感染症の感染対策も含めて述べることはいうまでもない。

本テキストは、主に感染経路の遮断による外因性感染の制御の観点から、消毒薬について述べる。

2 感染経路別の対策

感染症例を感染源とする感染経路の遮断策については、CDCが1996年に発行した隔離予防策ガイドラインが包括的な体系を示している。このガイドラインは2007年に改訂され、急性期の病院感染対策から長期療養施設等も含めた医療関連感染対策に拡大されている。以下、その概要を紹介する2、3、12、13)

隔離予防策は、標準予防策(スタンダードプリコーション)と感染経路別対策の2段構えの対策で構成されている。標準予防策はすべての患者に関して普遍的に適用されるが、感染経路別の対策は、特定の感染起因菌が検出された、または疑われた場合においてのみ、標準予防策に加えて適用される。

1996年のガイドラインの標準予防策は、主に血中ウイルスによる職業感染を防止する目的で普及したユニバーサルプリコーション(普遍的予防策)の対象微生物および防御対象物を広げてさらに発展させたものであり、すべての血液、体液、分泌物(汗を除く)、排泄物、汚染物を感染性ありとして取り扱うもので、手袋など保護具の使用、手指衛生、使用済み器具などの処理、環境清掃、針刺し防止などの労働衛生、環境を汚染する患者の配置などからなる。ユニバーサルプリコーションがもっぱらB型肝炎ウイルス、エイズウイルスなど血中ウイルスを考慮して考案された体系であるのに対し、この標準予防策は、多剤耐性菌などその他の微生物も視野に入れて考案された感染経路の遮断策であり、主に医療従事者を守るためのものであった。2007年のガイドラインでは、患者の感染防御の概念が加わり、標準予防策に「呼吸器衛生/咳エチケット」、「安全な注射手技」および「特別な腰椎穿刺手技での感染制御策」が追加された。

感染経路別の対策としては、開放性肺結核などの空気感染、インフルエンザなどの飛沫感染、MRSAなどの接触感染の3つの感染経路について予防策が規定されている。

空気感染は5ミクロン以下の飛沫核に乗って空気中を長時間浮遊し伝播する微生物によるもので、陰圧の個室など空調管理やろ過マスクの使用による空気予防策がポイントとなる注1)

注1)
ここでいう空気感染とはヒトからヒトへの空気感染のことを指している。レジオネラやアスペルギルスも空気感染するが、それは主に水や空調など環境からの感染でありヒトからヒトへの感染ではないため、ここでいう空気予防策は適用されない。なお、結核は飛沫核による空気感染にほぼ限定されるが、麻しんや水痘には空気感染以外の感染経路もある。また、最近、痘そう、重症急性呼吸器症候群(SARS)、高病原性鳥インフルエンザ、ノロウイルス感染症など、空気を介しての感染の危険性が指摘されている。

また、飛沫感染は5ミクロンを超える飛沫に乗って伝播する微生物によるもので、この飛沫は約1メートル以内に落下するので、患者との距離を基本としたベッド配置や通常のマスクの使用による飛沫予防策がポイントとなる。
これに対して、接触感染は、患者との直接接触や周辺の物品・環境表面を経由した間接接触により伝播する微生物によるもので、個室隔離、手袋の使用、消毒薬による手指消毒、ガウンの着用、聴診器などノンクリティカルな器具の共用禁止や消毒など、さまざまな接触伝播経路における予防策が必要となる。

大きな観点から整理すれば、接触予防策は標準予防策の範囲をより拡大し、厳格化したものであるといえる。遮断の対象として、血液、体液などへの接触のみならず、患者の皮膚、衣服、周辺環境への接触も伝播経路としてとらえ遮断するとともに、医療従事者の手指やノンクリティカル器具、物品を消毒して接触伝播のリスクを減少させることが意図されている。

3 滅菌と消毒の役割

前項の「2.感染経路別の対策」を滅菌、消毒の観点から整理すると、滅菌と消毒は、標準予防策と接触予防策において重要な役割を果たすことがわかる。

1)標準予防策において

器具や物品が再利用される場合、その利用用途により滅菌または消毒をしなければならない。メスなど組織内に侵襲するクリティカル器具には、すべての微生物を殺滅する滅菌が必要であり、内視鏡など粘膜や損傷皮膚に接触するセミクリティカル器具は、多数の芽胞を除きすべての微生物を殺滅する高水準消毒または滅菌をしなければならない。また、体温計など粘膜に接触する一部のセミクリティカル器具や、聴診器など健常皮膚に接触するノンクリティカル器具には、必要に応じて中水準消毒、低水準消毒を適用する。なお、消毒薬で完全な無菌を達成することは容易ではなく、滅菌は主に加熱などの方法で行われる14、15)。ただし、これらの消毒・滅菌処理にはいずれの器具・物品においても洗浄が不十分である場合、消毒・滅菌の効果が十分得られない可能性があるため、消毒・滅菌処理前に適切な洗浄を行うことが重要である12、13)

ところで、標準予防策において、ノンクリティカル器具、物品、環境については、血液、体液、分泌物、排泄物などとの接触やその可能性がない限り、原則的には滅菌や消毒を行う必要がなく、消毒薬を用いない清拭、洗浄および清掃方法で十分な場合が多い。

手指衛生は標準予防策において微生物伝播を減らす重要な要素であり、患者と接触する前、患者の皮膚や周辺の物品・環境に接触したとき、血液、体液、分泌物、排泄物などと接触したあと、手袋を外したあと、患者ケアにおいて汚染部位から清潔部位に移るときは手指衛生を行う。手指衛生の方法は、抗菌成分を含まない石けんによる手洗いを正しく行えば十分であるが、コンプライアンスを高める目的で、手指に目に見える汚れがない場合は、日常的に速乾性手指消毒薬の使用を推奨している2、3)

ノンクリティカル器具に血液などが付着した場合には、もっぱら洗浄や拭き取りによって血液自体を除去することが肝要であり、血中ウイルスに有効な消毒薬は補完的な意味で使用されるべきである。医療従事者の皮膚、粘膜、組織が血液などにさらされた場合も、徹底的な洗浄が肝要であり、血中ウイルスに有効な消毒薬は念のため用いてもよいとされているに過ぎない。生体に安全に適用可能で、血中ウイルスへの有効性が確認されている消毒薬は選択肢が限定されており、また、それらの消毒薬を血液にさらされた生体に適用することで感染の可能性を減少させたという積極的な証拠は未だない16~18)

以上のことを総合的に勘案すると、標準予防策において消毒薬が重要な役割を果たすのは、もっぱら、内視鏡などのセミクリティカル器具を消毒する場面と手指衛生である。

2)感染経路別予防策において

標準予防策に加えて接触予防策が必要な場合、つまりMRSA症例が大量に排菌している場合やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)症例の場合などには、消毒の果たす役割が増大する。ノンクリティカル器具は、他の患者、もしくは次の患者と共用する場合には、通常の清拭、洗浄および清掃に加えて消毒を行う。ベッド周辺や医療従事者や患者の手が頻繁に接触する環境表面(ベッド枠、床頭台テーブル、ドアノブ、病室のトイレの中および周囲)は一日一回以上の清拭、消毒を行う2、3)。しかし、床面など、直接接触にも間接接触にも通常関与しない環境表面については、接触予防策においても通常の清拭、洗浄および清掃で十分であり、消毒を行う必要はない2、3、12、13、19)

空気予防策や飛沫予防策が必要な場合、つまり結核患者やインフルエンザ患者などの場合にはノンクリティカル器具や環境について特別な消毒が必要となることは少なく、標準予防策の対策で十分である。このように、結核患者の個室について日常的に特別な環境消毒を行うとは勧告されていないため20、21)、主に結核菌に対する有効性で区別される中水準消毒と低水準消毒の区分の現実的な意味合いが、環境消毒の側面では薄れている。

なお、標準予防策的な原則が徹底している場合には、MRSA患者、結核患者、インフルエンザ患者などに使用したセミクリティカル器具について特別な消毒が必要な場合は少ない。現実的には、例えばこれらの感染症患者に使用した器具を他の患者に使用する場合に、特に結核菌やインフルエンザウイルスなどを対象とした消毒法を選択することがある。しかしながら、基本的には吸引カテーテルなど粘膜に接触する器具、つまりセミクリティカル器具は感染症の有無にかかわらずすべての患者について高水準消毒または滅菌を行うべきである。十分な高水準消毒または滅菌を行えば結核菌やインフルエンザウイルスを含む多くの微生物に有効であるので、患者の感染症により消毒法を区別する必要はあまりないことになる。クリティカル器具についても同様で、すべての器具について滅菌を行うべきである。

以上のことを総合的に勘案すると、標準予防策に追加して行われる感染経路別予防策において消毒薬が重要な役割を果たすのは、もっぱら、接触予防策のために、聴診器などのノンクリティカル器具や、頻繁に接触する患者周辺の物品・環境を消毒する場面である(表Ⅰ-1)。

表I-1 予防策の種類と消毒の有無(「+」は「加えて」、「・」は「または」を示す)
清浄化の対象 標準予防策 感染経路別予防策
空気 飛沫 接触
クリティカル器具 洗浄+滅菌 洗浄+滅菌 洗浄+滅菌 洗浄+滅菌
セミクリティカル器具 洗浄+滅菌・消毒 洗浄+滅菌・消毒 洗浄+滅菌・消毒 洗浄+滅菌・消毒
ノンクリティカル器具 洗浄・清拭 洗浄・清拭 洗浄・清拭 洗浄・清拭+消毒
頻繁に手が触れる表面
(例:ベッド枠、床頭台テーブル、ドアノブなど)
清拭・清掃 清拭・清掃 清拭・清掃 清拭・清掃+消毒
(1日1回以上)
ほとんど手が触れない表面
(例:床面など)
清掃 清掃 清掃 清掃
手指衛生 速乾性
手指消毒薬
*
速乾性
手指消毒薬
*
速乾性
手指消毒薬
*
速乾性
手指消毒薬
*

* 抗菌性石けんと水による手洗いでもよい。目に見える汚れのある場合、血液、体液、たんぱく性物質で汚染されている場合、クロストリジウム・ディフィシルやエンベロープのないウイルス(ノロウイルスなど)などの病原微生物が関与している場合には、非抗菌性石けんまたは抗菌性石けんと水による手洗いを行う。

なお最近は、手指衛生のコンプライアンス(遵守率)を高める目的で、手指の洗浄の代わりに速乾性手指消毒薬を繁用することが推奨されている2、3、22、23)

4 消毒薬の適正使用にむけて14、15、24~27)

消毒は、すべての微生物を殺滅する滅菌とは異なり、微生物の不完全な伝播の遮断法である。グルタラールによる高水準消毒でも、通常、実務的に適用が可能な時間内ですべての芽胞を殺滅できるわけではなく、また一部の抗酸菌において低感受性が報告されている28~33)。芽胞を考慮しない中水準消毒薬においても、結核菌や真菌に対する十分な効果を発揮するためには、適切な濃度、温度、消毒対象物の清浄度、接触時間などを確保することが必要である。結核菌を考慮しない低水準消毒薬においても、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌やセラチアが強い抵抗性を示す場合があり、消毒薬中で長期間生存し医療関連感染を発生させる場合もある25)

また、どのような方法を用いても、医療従事者の手指など生体を無菌にすることはできない。したがって、手術的操作を行う場合には滅菌手袋を着用することが必要であり、また汚染が予想される手技を行う場合にはあらかじめ手袋を着用することが必要である。

概して、強力な消毒薬ほど生体毒性が強い傾向があり、人体に適用できないのみならず、それを取り扱う医療従事者の中枢神経系、呼吸器系、皮膚などへの影響を考慮しなければならないものもある。また、多くの消毒薬が、排水処理における活性汚泥に悪影響を与えるなどエコロジーな意味での有害物質であることも忘れてはならない。さらに、消毒薬の臭気や引火性、被消毒物に対する腐食性や着色など、実務的な意味においても問題が存在する。他の多くの医薬品と同様、消毒薬が生体毒性をもつ化学物質であることは本質的な事柄であり、これらの欠点をすべて克服した消毒薬の誕生を待望することは、あまり現実的でない。

このような観点から考察すると、例えば80℃以上の熱水による消毒は、芽胞を除くほとんどの微生物を短時間で感染可能な水準以下に死滅または不活性化するので、有効の面において信頼性が高い。また、同時に熱水による消毒は物理的な洗浄も兼ね、化学物質としての有害性がないという意味でも理想的な器具消毒法である。食器の洗浄やリネンの洗濯においても適度な熱水と洗剤を使用することにより、ほとんどの場合、必要なレベルでの消毒を兼ねることができる。

感染対策全般において、その効果に疑問が生じ、経済的に考慮しても不必要な対策であると判断される対策があるように、消毒薬による消毒が不必要である場合には、消毒薬を用いることが過剰使用となり、適正とはいえない場合もある。消毒薬の感染防止効果について臨床的な感染率評価を行った科学的な知見は未だ少ないが、収集しうる限りの医学的知見をもとに、科学的で実務的な選択を行うことが望ましい。

例えば、日常的な環境微生物検査や床消毒の必要性は否定されている。床のように広範な面積を占める環境表面は無菌化することは困難であり、あえて無菌化しようとすれば、医療従事者や患者にとって潜在的に有毒物であるような強力な消毒薬を大量に拡散させることとなり危険を伴う。また、床に存在する微生物が医療関連感染の原因となったという積極的な証拠はなく、床から検出される微生物は感染の原因ではなく結果として捉えるべきであると考えられる。もちろん室内に塵埃がたまっているような不衛生な環境においては、飛散する塵埃とともに感染起因菌が患者に降りかかる恐れがあり、日常的な環境清掃が肝要であることは当然である。

しかしながら、消毒薬は、消毒対象物の種類と清浄化の目的に応じて、滅菌や加熱消毒など他の手段を用いることができない場合において選択されるものであり、感染起因菌の絶対数を減少させて伝播リスクを減少させるという意味で、感染制御に不可欠なツールである。各消毒薬の特性と欠点を理解しながら、使用の目的に応じて、適正に選択することが肝要であり、そのためには、消毒薬に関する正しい基礎的な知識を習得することが必要である。

以上、消毒薬による消毒は、もっぱら不完全で欠点を伴う方法であること、また不必要な場合もあること、しかしながら感染対策上不可欠な手段であることを述べた。そもそも、感染対策は、消毒のみならず、様々な諸対策が組み合わされて初めて有効に機能するものであり、その他の諸対策がどのように組み立てられ、実施されているかを考察しなければ、消毒薬の適正な使用について具体的な結論を導くことはできない24)。例えば、どのような場合に手袋が着用されるのか、または、されないのかを考慮しなければ、どの手指消毒薬をどのような場合に使用するべきであるか判断することは難しい。

オールマイティとはなり得ない消毒薬を、いかに有効に、安全に用いて、感染制御を成功させるか、すなわち種々の感染率の低下を実現するかについて、今後さらに、研究されるべきテーマや実務的に試行されるべき課題は山積している。

消毒薬テキスト

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